3行紹介
①お金を稼がない人間は死ねばいいとする今の国家は、日本国憲法25条の生存権に違法だ。
②その為、「芸術活動」という名目で、著者は新しい政府を立ち上げることにした。
③「0円特区」という、貨幣経済ではなく態度経済を主にした経済活動で人々が生活し、生きていくことができる場所をつくることを目指す。
文章チェック
・つまり、法律も、法律そのものは変化しないが、それを捉える人間の意識で大いに変化してくるわけだ。だから判決が変わってくる。司法というのはその多層なレイヤーをすり合わせる場所なのだ。
独立国家のつくりかた(2012).坂口恭平、講談社
・同じ敷地に見えて、公園とその横の隅田川河川敷のあいだには実は線が引かれていて持ち主が違うらしい。隅田川は東京都が管理していることがわかった。東京都の土地には警察官は入って来れないらしい。
・試せば試すほど、人間はどんどん智慧を身につけていく。そして恐怖心が和らいでいき、どんな困難な状況であろうと淡々と生きていくことができるようになる。
・僕は、逃げるべきだと知りながら言わない政府というのはもはや政府ではないと認定した。つまり、現在は無政府状態なのである。政府がないのはまずいから、僕のほうで一つつくってみようとしたまでだ。
・このように自分が実現したい行動を、自らの態度を占めることで実現させる経済の在り方を、僕は「態度経済」と名付けた。これまでの貨幣経済、資本主義経済ではなく、態度をもとに人々の交易、貨幣の交易を実現する経済。
・態度経済は貨幣経済と決別するわけではない。ただそれは匿名化したシステムとはまったく別のレイヤーにあるものだ。もっと抽象度の高い、かつ具体的な経済感覚である。
・一生治らないこの病気に感謝したい。むしろ、今、僕にとって躁鬱病は病気でもなんでもない。これは、とても自然な体の動きであることがわかる。この無意識だらけの無思考な社会が、居心地がいいわけないのだ。
・このように一見、障害に見えるものでも、障害をベースにした生き方、経済の在り方を考えていくと実は障害ではなく、それが自分独自の思考を具現化する方法論であることに気付く。
読書感想文
「同じものを観たはずなのに、どうして行動にここまで差が出るのだろう?」
著者は3.11の福島原発事故で、国民に知らせないまま国会議員の家族が海外に逃亡していたことに、深い憤りを感じたという。
地震があった日は上京したばかりのバイトに少し慣れてきたところで、地震で電車が止まった為にバイトは当然休みになった。暇ができたので、少し散歩しながら家に帰り何気なくテレビを点けると、津波に町が飲み込まれ、原発がヤバいことになっている姿が画面に映し出された。
衝撃的な映像と死者数に驚いたものの、社会に対する関心が薄い自分は、「新しいバイト探すことになるかもな…」とぼんやり考えることしかできなかった。
同じものを観ても、人によってそれに対するリアクションが変わるのは、「憤り」、「生理的に気持ち悪い感情」に向き合うから生まれてくるのだろうと思った。
思考停止させずに向き合う。
大変な生き方だと思う。
著者は躁鬱病という病気を抱えても、それに感謝し、自分独自の仕事の方法論として変換している。
今も自らの電話番号を公表し、「いのっちの電話」として自殺観念を持つ人と電話で話すという活動をしている様だ。
自分には社会を変えたいということを使命と思える器ないが、今自分が持っている「大変さ」を、向き合うべきか向き合わなくてもいいかを、判断する知性を持ちたいと思った。
また、気になるワードとして本書には「態度経済」という言葉が出てくる。
「態度経済」を簡潔に説明すると、「人はそれぞれ才能があるので、それを共有して、助け合いをしていく経済活動」のことだ。
自分は、貨幣経済・資本主義経済というメインストリームに乗り遅れたので、未来の経済はどうなるだろうと想像することがある。
そう思うと本書の「態度経済」というのは、配信の投げ銭やクラウドファンディングというものには既に組み込まれているのではないかとも本書を読んで思った。
全部が一気にガラッと変わることは無いとは思うが、きっと少しずつ、著者の述べる「態度経済」は日本にも染み込んでいくのではないかと思う。
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