3行紹介
①哲学とは先人が経験し考え抜いてきた、世界観や人生観における一つの答えを示している。
②本書は、章のテーマごとに様々な時代の哲学者の考えが解りやすく説明されており、哲学の入門書として非常に読みやすい構成となっている。
③哲学を学ぶことは、現代を生き抜く上でも困難や問題解決の上での救いとなるだろう。
文章チェック
・私たちは、生きること自体が謎だからこそ、生きていけるのです。
世界の哲学者に学ぶ人生の教室(2019).白取春彦 (著), 冀剣制 (著)、ディスカヴァー・トゥエンティワン
・しかし「無知の知」の解釈については、個人的には非常に優れた知恵だと思っている第二の解釈を強調したいと思います。すなわち、「自分の無知を見出すことこそが、本当に無知を自覚することだ」というものです。
・実は私たちは、単なる知識不足により死を恐れているにすぎないのです。
・それは道徳教育のたまものだと言う人もいますが、その見解は恐らく間違いで、理性の多くは先天的なものなのです。
・理性の力を養うことは、実は難しくありません。論理を客観的に構築する訓練をする以外で最も重要なことは、まず理性に従わなかった罪悪感という心の障壁を取り除くことです。
・ニーチェによれば、欲望を放任しすぎると人生に混乱を招くけれど、適度に放任しコントロールさえ失わなければ、多種多様な人生を享受できるといいます。彼は、真に美しい人生とは理性的な美しさだけではなく、感情的な欲望に酔う美しさも混じっているべきだと考えたのです。
・幸福な人生とは、外に求めるものでも運に頼るものでもなく、自分自身で決めるものである
・私たちは、人や物に頼っても幸せにはなれないのです。そうなると私たちに幸福をもたらしてくれるのは、自分の能力と内在的な性質だけということになります。この観点は、実は現代の幸福学の研究とも合致しています。
・ですから「快楽」を追求するより「喜び」を追求するほうが得策です。喜びというのは淡いものですが、満足感をより継続することができます。そういう満足感のほうが、感覚器官で味わう快楽より、幸福への近道だといえます。
・寛容の心という優れた性質を一つ備えるだけで、いくつもの不愉快な気分を軽減でき、多くの幸福がもたらされます。つまり私たちは、優れた性質を多様に備えることで、もっと簡単に幸福な人生を獲得することができるのです。
・では私たちを幸福な人生へと導いてくれる優れた性質を養う方法はあるのでしょうか? アリストテレスの答えは「実践し、習慣にする」です。
・デカルトは、人が間違いを避けられない主な原因は、日頃から正しいと信じている間違った知識のせいだ、と考えました。
・そして彼は「人生において真理を追究するには、信じていることをすべて、少なくとも一度は疑う必要がある」と主張しました。
・「くるぶしは、くるぶしに痛ませておいて、君は、君がやるべき座禅をやりなさい」
・孤独という日本語はネガティブな意味合いが強いでしょう。人から愛されず、通常のつきあいすらなく、一人ぼっちで淋しい状況が孤独です。英語にすれば、lonelinessとなります。しかし、英語にはもう一つの孤独があります。それはsolitudeです。ショーペンハウアーが勧めているのは、こちらのほうの意味での孤独です。
・ニーチェといえば詩的な著書『ツァラトゥストラはかく語りき』に出てくる「神は死んだ」という衝撃的なセリフばかりが有名になってしまっていますが、彼の全仕事を見渡してみれば、結局はたった一つのことを言いたかったのだと分かります。それは、「それぞれが自分なりの価値を創造せよ」ということでした。
・当時、ニーチェは『反キリスト者』(1895)という本を書いて、キリスト教を批判しました。大多数の人がキリスト教徒であったヨーロッパにあって、このタイトルはあまりにも悪魔的で挑発的でもありました。
・「欲するがまま行え。その前にみずから意欲する者となれ」 自分のしたいことを実際に行わないと、人生は差し出されてきたものの消費や処理でしかなくなるからです。
・たとえば、solitudeという英語を日本語で「孤独」の一語に翻訳することはできません。日本語の「孤独」はむしろlonlinessに近いからです。 このlonlinessという言い方はドイツ語のEinsamkeitと同じように寂しさが主体となっていますが、solitudeのほうには独りでいることの楽しさや充実感が含まれています。それにぴったりと対応する日本語の一語はないのです。
・このように人間関係が商品の交換のようになってしまっているのは、物質的成功が価値を持つ社会になっているからなのです。
・愛するという能動性を根底から支えているのは、「 配慮」「責任」「尊敬」「知」です。これらは、愛することができる人が実際に人を愛するときの相手に対する態度です。
・将来の自分の姿になるために今から生き方を変えていくというこのような姿勢を、サルトルは「 投企」(フランス語 projet:自分の前に投げ出す)と呼んでいます。 そして、実存的に生きるとは「投企しながら生きること」です。
読書感想文
章ごとに本書は様々な哲学者を紹介しながら、それぞれの「哲学」を紹介している。
章ごとのテーマはざっさり言うと、「真理」「考え方を疑う」「良く生きるとは」「世界への見方」などだ。
全体を読んだ感想としては、仕事や人間関係、そもそも生きるのが辛いといった人にはヒントになる内容になっていると思う。
kindleで読めば目次からすぐ読みたい章に飛べるというのも優しく、「kindle unlimited」に加入していればサブスクリプションの料金で無料で読める(2024年10月21日現在)。
個別の哲学者への感想としては、
もちろんソクラテスの「無知の知」のも改めて痺れたし、
幸福について説くアリストテレスも良かったし、
真理の追究の為には自分の信じていることを全て一度は疑うべきと言うデカルトに感動したなど、
数えきれない程の発見があった本ではあった。
自分の中で1番惹きつけられたのがフリードリヒ・ニーチェだ。
各人は、善を、自分だけの倫理道徳を、みずからで発見せよ
フリードリヒ・ニーチェ
この言葉は、世論がどうだの、これは間違っているだの、男女差別がどうだの、色々と個人の感想が制限される世の中に生きる自分には深く刺さった。
ニーチェは哲学者の中でもとてもロックな匂いがする。
大多数がキリスト教徒である世界でキリスト教から派生した倫理道徳を批判するという行為も最高にロックだし、晩年は精神が崩壊(読み書きもできずに記憶も失う)してそのまま44歳で病死してしまうところに、言葉にすることが難しい何かを感じる。今はしっくりくる言葉が見当たらないなのだけど。
※ちなみに、自分は福本伸行さん漫画で「アカギ」というキャラクターが自分は好きなのだが、ニーチェとアカギの言動は似ている気がする
少し前に、「生きているだけで金メダル的な」Xの投稿に「死んでください的な」返事をして、すぐ消すも大炎上するといニュースがあった。
人に向かって「死んでください」と言うことは自分も良くないと思うのだが、「生きているだけで金メダル」という言葉にずっと引っかかってる自分がいた。
それはきっと自分は「生きているだけで金メダル」だなあと思えない人間だからだと思う。
「命は大事」だが「命を粗末に扱わないとできないこともある」し、自分が憧れる人は大なり小なりだが、そういう部分がある気がしている。
別に死にたがりという訳では無いのだけど、「自分の倫理道徳」や「自分にとっての善」を、ニーチェの様に追及して行ければよいなと今は思っている。
ニーチェの様に狂うことができる天才では、きっと自分は無いのだろうけど。
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