【要約・感想】ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか

目次

3行紹介

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか

①人が先延ばしをしてしまうのは脳の構造上から仕方がないが、時に「先延ばし」という行為が人生を破綻させてしまう。
②先延ばし(モチベーション)の計算式は「期待×価値÷衝動性×遅れ」で表すことができる。
先延ばし癖に悩んでいる人には本書に書かれている内容が有効な手助けになるだろう。

文章チェック

・私たちはこれまで何十年もの間、先延ばしの本質を理解せず、原因を見誤っていた。先延ばしを生む原因の一端は、遺伝的要因、すなわち脳の構造にある。その証拠に、歴史上のいかなる時代にも、そして地球上のいかなる文化圏にも、先延ばしが存在する。

・誓うのはけっこうだが、問題が一つある。先延ばしは一種の癖だ。簡単には克服できない。私たちには、ものごとが遅れている状態を改めようとするのではなく、言い訳を見つけようとする習性がある。

・エディー、バレリー、トムはみな、先延ばし人間だが、タイプはそれぞれ違う。自動車が動かなくなるという結果は同じでも、原因がガス欠、タイヤのパンク、バッテリー切れなどさまざまなのと同じで、先延ばしにもいろいろなタイプがある。

・ポジティブ心理学の旗振り役である心理学者のマーティン・セリグマンが一九六〇年代におこなった研究によれば、自信や前向きな考え方の欠如と先延ばしの間には関連性がある。

・多くの人を対象にした数々の研究によりわかっているのは、衝動性の強さ、そしてそれにともなう根気のなさ、自己コントロール能力の弱さ、集中力の乏しさが先延ばし行動の中核をなしていることだ。私が二万人を超す人たちを調べた結果を見ても、さまざまな人格上の特徴のなかで、先延ばしとの関連が最も強いのが衝動性だった。

・私たちがものごとを先延ばしするのはおおむね、現在を具体的に考え、将来を抽象的に考えるからなのである。

・モチベーション理論の方程式  エディーとバレリーとトムの三人が抱えている問題──期待、価値、時間──は、先延ばしを生み出す三つの基本的な構成要素だ。課題を成し遂げた場合にご褒美を得られる確実性(=期待)とご褒美の大きさ(=価値)が小さければ、その人が熱を入れて課題に取り組む確率は小さくなる。ご褒美が手に入る時期が遅く、しかもその人が時期の遅れに対する忍耐心が弱いと(=衝動性)、やはりモチベーションが減退する。

・誘惑が身近なほど、誘惑の影響力が強く、私たちの意思決定がそれに支配され、結果として先延ばしが避けられなくなる。

・衝動性が私たちの存在に深く刻まれているのは、現代社会でそれが必要とされるからではなく、人類が狩猟採集生活を送っていた時代にその性質がきわめて有益だったからなのかもしれない。

・この研究でわかった点の一つは、世界の国々が「近代化」するにつれて、欧米型の市場経済的な価値観を共有する社会が増えていったことだ。とくに、世界で総じて個人主義の傾向が強まり、人々が他人にあまり遠慮せずに自分の利害を優先させるようになった。もう一つ際立っていた点は、近代化にともない、先延ばしが深刻化したことだ。経済が成長するにつれて、過去数十年の間に、慢性的な先延ばし癖をもつ人が五倍に増えた。

・一方、人間の幸福の度合いは、成功と自己改善の影響も受けるが、親密な人間関係の影響を最も強く受ける。私が一二〇〇件近い先行研究をメタ分析したところ、ある人の幸福度を左右する最大の要素は、充実した人間関係だとわかった。

・ 私たちは、短期的には「やったこと」を後悔するが、長い目で見れば「やらなかったこと」を後悔する。間違ったことをする以上に、やるべきことをやらないほうが大きな打撃をもたらすのだ。

・明確な成功体験を味わい、その体験をはっきり記憶にとどめ続けられる。成功の体験があれば、人間は将来にわたり精神を前向きに保てる。「私にはできた!」という記憶が「私にはできる!」という気持ちを呼び起こすのだ。

・自信過剰は、自信不足と同じくらい弊害がある。

・年齢を重ねると先延ばしをあまりしなくなる理由は、この目的意識という要素で説明できる面が大きい。私たちは大人になるにつれて、ものごとの因果関係が理解できるようになり、若い頃は無意味に感じた活動にも意味を見いだせるようになる。

・この戦略を応用した先延ばし対策に、「非スケジュール」というテクニックがある。スケジュール表に仕事や義務の予定を記す前に、娯楽や自由時間の予定をまず書き込むのだ。そうすると、日々をそれほど退屈に感じなくなる場合が多い。欲求不満がたまって爆発を起こす前に、ガス抜きをすることが重要なのだ。

・注意コントロールの方法は、大きくわけて二つある。一つは誘惑の感じ方を変える方法、もう一つは適切な環境を整える方法である。

・誘惑の原因になるものを抽象的・象徴的に考えるよう努めれば、頭の中で誘惑を弱められる。

・どの程度具体的に、そして、その程度短期のゴールを設定すべきなのかという一律の基準はない。それは、一人ひとりの衝動性の強さ、課題の退屈さ、誘惑の性格などに左右される。あまり細切れにゴールを設定すると煩雑なので、たいてい、一日単位でゴールを設定するといい。

・ゴール設定をする際には、なにを基準にゴールを定めるかを決めなくてはならない。課題に費やす時間(=投入量)を基準にするのか、それとも成し遂げた成果(=成果量)を基準にするのか。

・意図を言葉にすることは、言ってみれば、自分の脳の中に入り込むための最も手っ取り早い方法だ。

・ティムは天井を見上げ、大学時代の記憶を呼び起こした。「リーダーシップのスタイルには、大きくわけて二つの種類がある。メンバーの信念や感情に訴える変容型(=トランスフォーメーショナル)のリーダーシップと、メンバーの利害に訴える取引型(=トランザクショナル)のリーダーシップだ。

・先延ばし癖がひどいと、将来の夢が朽ち果てて本物の人生を送れなくなるが、先延ばしを完全になくそうと努めたときも同じ結果に陥る。

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか(2012).ピアーズ・スティール (著)・池村 千秋 (翻訳)、CCCメディアハウス

読書感想文

本書は久しぶりに読んだ本の中でも格段に面白かった。

ただ、タイトルが「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」というだけではこの本の良さを最大限には表せてはいないと思う。
※タイトルがキャッチだとは思うが…

自分の個人的な意見を言わせてもらえば副題に「モチベーション理論の方程式」と入れた方が良いのではないかと思う。

自分もこの本を手に取ったことからお察し頂けると思うが、典型的な先延ばし人間だ。
中々予定を立ても思い通りにならず、ダラダラと課題を先延ばしにして締め切り間際に焦って行動することがよくある。


ちなみに本書に書かれている先延ばしのテストを実際に自分が行った結果、先延ばしの三要素「期待」・「価値」・「時間」の点数はそれぞれ「29点」・「24点」・「26点」と、いずれも基準の24点以上を叩き出したことから、自分はやはり先延ばしの傾向が強いのだと思う。

この本の感動したところは、その先延ばしの理論を1つの方程式で表した美しさだ。
「期待×価値÷衝動性×遅れ」

自分は理論が好きだ、さらに言うと方程式にできる理論はもっと好きだ。

また禁煙は自分の目下で必要な課題であるが、それの参考になる記述もあったので、ここで実践することを書いておこうと思う。

本書を読んで禁煙に取り入れそうなところは…

①誘惑の原因になるものを抽象的・象徴的に考える
②辺縁系が魅力を感じるものにケチをつける「潜在感作法」を行う

①に関しては、
タバコを吸いたくなるとタバコのことしか考えられなくなるのは喫煙者にはわかるだろう。
その時に「タバコ」という物をイメージするのではなく、「紫の毒の煙」と考えることする。

また②に関しては、
タバコを吸う時に車のマフラーに口をつけて、排気ガスを吸うイメージを持ちながらタバコを吸う。

ひとまず上記の2点を実践し、小さなゴール(例えば午前中は吸わなかったなど…)を設定しながら禁煙にチャレンジしていこうと思う。

時が来たら何度でも読み直せばいい。

kindleセールで買ったが、間違いなく価格以上の価値がある本だった。

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